現場

エレベーターはもう動いている。が、その階以外のところで降りることが多かったので、「現場」の上や下に行くことはあっても「現場」を横切ることも、現場そのものを見ることはなかった一週間だった。が、今日はその現場を見ることになった。その階にエレベーターが止まる。ドアが開く。古いためか、現場による被害で動かなくなると言うよりは、リコールかかってもおかしくないんじゃないか?というような感じのぎこちない開き方だった。

天井に這わせてあるケーブル類はむき出しになっていて、聞くと「今は使えない」そうだ。

壁が元の白さを失い、ペンキで塗られたものとは違った黒さを持っていた。エレベーターから一番近い部屋。そこが現場だ。誰もいない。何も置いていない。その隣の部屋。ホコリとススとじめじめとした湿気が立ち込める部屋。機械が自らを犠牲にして反乱したくもなるような環境だ。どこを触っても黒くなる自分の指。流石に後で手を洗った。

現場が元通りになるにはもう少しだけ時間がかかりそうだ。